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ToFカメラとは? ToFカメラの基礎知識から使い道、メリット・デメリット、他の技術との違いを解説

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製造現場や物流施設における深刻な人手不足を背景に、産業用ロボットや自動化システムの導入が急務となっています。こうしたシステムが正確かつ自律的に稼働するためには、人間の「目」に代わる高度なセンサー技術が不可欠です。そこで現在、空間を立体的に把握できる3Dカメラの中でもとりわけ注目を集めているのが「ToFカメラ」です。

Global Market Insightsの市場調査レポートによると、世界のToFカメラ市場規模は2023年時点で約40.5億米ドルと評価され、2032年には約180億米ドル規模へ成長する(年間平均成長率18%以上)と予測されています。

この数値からも、あらゆる産業でToFカメラへの期待が高まっていることがわかります。本記事では、自動化を推進する上で欠かせないToFカメラの基本原理やメリット・デメリット、他の3D測定技術との違い、そして具体的な活用事例までを客観的な事実に基づいて詳しく解説します。自社の課題解決に向けた導入検討の参考にしてください。

参考:Time-of-Flight Cameras Market Size, Share & Analysis Report - 2032

  

ToFカメラとは

ToFカメラの原理(Time of Flight方式)

ToFとは「Time of Flight」の略称であり、日本語では「飛行時間」を意味します。その名の通り「光が飛んで戻ってくるまでの時間」を計測して距離を割り出すのが、ToFカメラの基本的な仕組みです。カメラに内蔵された光源から近赤外線などの光パルスを測定対象物に向けて照射し、その光が対象物に当たって跳ね返り、カメラの受光センサーに戻ってくるまでの時間を極めて正確に測定します。

ToFカメラの原理の図解

光速は秒速約30万kmと一定です。そのため、光の往復時間を計測して2で割り、光速を掛けることでミリ単位の距離算出を可能にしています。計測にはピコ秒単位を識別する高度なセンサーを用いており、これにより高精度な距離測定が実現しました。

ToFカメラは3Dカメラの一種

一般的なデジタルカメラ(2Dカメラ)が取得するのは、縦横のピクセルによる平面情報と色情報のみです。一方、ToFカメラは画素の一つひとつが対象物までの「奥行き(距離)」を保持しています。

そのため、視野内にあるすべての物体について、立体形状や空間的な位置関係を「3D点群データ(ポイントクラウド)」として瞬時に取得可能です。このように平面画像では判別しにくい「物体の重なり」や「立体形状」を把握できることから、ToFカメラは「3Dカメラ」や「デプスカメラ(深度カメラ)」の一種として、自動化システムの構築に欠かせないデバイスとなっています。

ToFカメラでできること


距離測定・3D形状認識

ToFカメラの最も基本的な機能は、広範囲における対象物までの距離をミリ秒単位の高速処理で同時に測定し、立体形状を認識することです。一度の撮影で数万から数十万ポイントの測距データを取得できるため、複雑な形状の部品であっても、その輪郭や凹凸を正確にデータ化できます。この特性により、製造ラインでの製品寸法検査や、ピッキングロボットによる正確な姿勢認識が実現します。

物体検出・トラッキング

空間内において、あらかじめ設定した領域に何らかの物体が侵入したことを検出したり、移動する物体の軌跡をリアルタイムで追跡(トラッキング)したりすることが可能です。

従来の平面カメラでは、影の影響や背景との同化によって検出が困難なケースもありましたが、距離情報を直接取得するToFカメラなら、背景の色や柄に左右されず、物体そのものの立体情報のみを抽出して正確に捉えられます。これは自動搬送車(AGV)の障害物回避などに大きく貢献する技術です。

ジェスチャー認識

ToFカメラは、人間の手や体の動きを立体的に捉えることにも長けています。対象者が特定の動作(ジェスチャー)をしたことを空間座標の変化として認識できるため、タッチパネルなどの物理的な接触を必要としない非接触インターフェースの構築が可能です。

医療現場やクリーンルームなど、衛生面から機器に直接触れることが推奨されない環境において、機械の操作やシステムの起動などをジェスチャーだけで安全に行えるようになります。

ToFカメラのメリット


ToFカメラが製造現場や物流、ロボット分野で急速に普及している背景には、従来の3Dスキャン技術にはない独自の強みがあります。

主なメリットは以下の4点です。

  • リアルタイムな高精度3D測定
  • 長距離対応と設置の自由度
  • 低負荷なデータ処理
  • 優れた組み込み性

主なメリットについて、順番に解説します。

1. リアルタイムで高精度な3D測定が可能

ToFカメラは、1秒間に数十フレームという高速な処理(高フレームレート)で3Dデータを取得できます。一般的に距離精度の誤差は数mmから約1%程度に収まることが多く、ベルトコンベア上を流れる製品に対しても、遅延のないリアルタイムな高精度測定が可能です。

このリアルタイム性は、ラインを止めることなく全数検査を行いたい製造業において、生産性を落とさないための大きなアドバンテージとなります。

参考:未来を形作るTOFセンサーとは~種類や用途、できることを分かりやすく解説~ | 三栄ハイテックス株式会社

2. 測定距離が長く設置の自由度が高い

他の3D測定技術に比べて、測定できる距離の範囲が広いのも大きなメリットです。方式にもよりますが、数センチメートルの近距離から数十メートルの遠距離までカバーできる製品が広く普及しています。

近年では、パナソニック株式会社がアバランシェ・フォトダイオード(APD)画素を用いたToF方式によって、遠方250m先にある物体の高精度な三次元情報を取得できるセンサーを開発した事例も発表されています。

このように長距離測定が可能なため、工場の高い天井に設置して広範囲を監視するなど、設置場所の自由度が極めて高くなります。

参考:TOF方式長距離画像センサを開発 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan

3. 処理負荷が軽くエッジデバイスでの運用に適している

ステレオカメラなどの技術では、2枚の画像を比較してソフトウェア上で複雑な演算(マッチング処理)を行うため、高スペックなPCなどの計算資源が必要です。しかし、ToFカメラの距離算出アルゴリズムは「光の往復時間に基づく計算」であり、原理が非常にシンプルです。そのため、画像処理にかかるコンピューターの負荷が軽く、カメラ内部や省電力なエッジデバイス上で直接データ処理を完結させやすいという利点があります。

4. 組み込みシステムとの親和性が高い

処理負荷が軽いことに加え、近年の技術革新によりセンサーモジュール自体の小型化・省電力化が著しく進んでいます。

スマートフォンにも搭載されるほどの小型化が実現しているため、産業用ロボットのアーム先端や、小型の自律走行ロボット、各種検査装置などの限られたスペースへの組み込み(インテグレーション)が容易です。これにより、既存の設備を大きく変更することなく、後付けで3Dビジョン機能を追加できるケースも増えています。

ToFカメラのデメリットと導入時の注意点


ToFカメラには多くのメリットがある反面、光の性質を利用する技術特有の制約も存在します。導入を検討する際は、以下の4つのポイントを事前に確認しておくことが重要です。

  • 初期コストの高さ
  • 表面状態による影響
  • 距離範囲と方式の制約
  • 外光ノイズへの弱さ

それぞれ、詳しく解説します。導入後にがっかりすることがないよう、ToFカメラのデメリットも把握しておきましょう。

導入コストが比較的高い

高性能なイメージセンサーに加え、特定の波長を発する専用の光源(VCSELレーザーや赤外線LEDなど)を搭載する必要があるため、一般的な2Dカメラや簡易的なセンサーと比較すると、初期のハードウェア導入コストは高くなる傾向があります。

しかし、処理用PCのスペックを落とせる点や、導入後の生産性向上・省人化による長期的・総合的な投資対効果(ROI)を考慮すれば、多くの場合、数年で十分に回収可能な投資と位置づけることができます。

測定対象の表面状態に影響を受ける

ToFカメラは光の反射を利用する性質上、測定対象物の素材や表面状態によって精度が変動する制約があります。

例えば、光を吸収しやすいマットな黒色の物体や、光が透過してしまう透明なガラス・アクリル、光を乱反射する鏡面や強い光沢のある金属部品などは、センサーに十分な光が戻ってこず、距離が正しく計測できない場合があります。こうした素材を扱う場合は、照明環境を工夫する、または他の検査方式と併用するといったシステム設計上の配慮が不可欠です。

測定可能な距離範囲に制約がある

ToFカメラには、光の位相差を測る「間接ToF(iToF)」と、光のパルス時間を直接測る「直接ToF(dToF)」の2種類が主に存在します。

そのため、用途に合わせて適切な方式のToFカメラを選定しないと、期待する距離範囲での測定ができない点に注意が必要です。

  • iToF: 近・中距離で高解像度だが、距離を伸ばすとデータが正しく処理できない「折り返し現象」が発生しやすい。
  • dToF: 長距離測定に優れるが、高解像度化が難しい。

このように方式ごとのトレードオフがあるため、利用シーンに合わせた適切な機種選定を行わないと、期待した精度が得られない点に注意が必要です。

強い外光環境下では精度が低下する

屋外や、直射日光が強く差し込む窓際などでは、太陽光に含まれる強力な赤外線成分がセンサーに入り込み、ノイズとなって測定精度を低下させる傾向があります。

この課題を解決する手段が、特定の波長のみを透過させる「光学バンドパスフィルター」の使用や、外光耐性を高めた最新モデルの選定です。設置環境に応じた的確な技術的対策を講じることで、環境光による影響を最小限に抑え、安定した計測を実現します。

ToFカメラと他の3D測定技術との比較

3D計測技術の比較図(ToFカメラ、ステレオカメラ、構造化光方式)
3D測定を実現するカメラには、ToF方式以外にも代表的な技術が存在します。自動化システムを設計する際は、それぞれの特性を理解し、用途に応じた使い分けが重要です。ここでは代表的な「ステレオカメラ」「構造化光(パターン照射)方式」との違いを解説します。

比較項目 ToFカメラ ステレオカメラ 構造化光方式
原理 光の飛行時間を計測 2つのカメラの視差を利用 照射したパターン光の歪みを解析
測定距離 中距離〜長距離に強い 構成により様々だが遠距離は困難 近距離〜中距離(精度が高い)
処理負荷 軽い 重い(複雑な画像マッチングが必要) 重い(パターンの解析が必要)
暗所対応 非常に得意 不得意(対象物の模様が見えないため) 得意
対象物の模様 模様がなくても測定可能 模様(テクスチャ)がないと測定困難 模様がなくても測定可能
主な得意分野 リアルタイム、広範囲検知 外光環境下の測定、色の取得 精密部品の高精度な3D検査

ステレオカメラとの違い

ステレオカメラは、人間の目と同じように左右2つのカメラの視差(見え方のズレ)から距離を算出(三角測量)します。太陽光下でも比較的機能しやすく、カラー画像も同時に取得しやすいのが特徴です。

しかし、対象物の表面に模様(テクスチャ)やエッジがないと視差を計算できず、また暗闇では機能しません。ToFカメラは自ら光源を持っているため、真っ暗な環境や、模様のないのっぺりとした壁のような物体でも正確な測距が可能。この「環境を選ばない安定性」こそが、ToFカメラの決定的な優位性と言えます。

構造化光方式との違い

構造化光方式は、プロジェクターで格子状などの特定パターンを投影し、その歪みから立体形状を高精度に復元する技術です。

ミクロ単位の精密検査には最適ですが、複雑な解析処理を要するためリアルタイム性には欠ける側面があります。また、遠距離では投影パターンがぼやけるため、測定範囲も限定的です。

対して、動きの速い製造ラインや広範囲の空間認識においては、処理が高速で長距離にも対応できるToFカメラが圧倒的なパフォーマンスを発揮します。

ToFカメラの活用事例・応用分野


ToFカメラは、その高速・高精度な空間認識能力を活かし、幅広い産業で導入が進んでいます。

主な活用シーンは以下の通りです。

  • 製造業:ロボットの「目」として、バラ積みピッキングや外観検査を自動化
  • 物流・倉庫:荷物のサイズ(体積)を瞬時に計測し、積み付け作業を最適化
  • 自動車・車載:ドライバーのモニタリングや、乗員に合わせた安全制御を実現

製造業(検査・ロボットビジョン)

自動車部品や電子機器の組立ラインでは、産業用ロボットの「3Dビジョン」としてToFカメラが活躍しています。

最も代表的なのが「バラ積みピッキング」です。箱の中にランダムに重なり合った部品の山をToFカメラで瞬時に3Dスキャンし、ロボットアームが一番掴みやすい部品の正確な座標と傾きを計算してピックアップします。

従来は部品を綺麗に並べる専用の整列機が必要でしたが、これを省略できるため、大幅な設備のコストダウンと段取り替え時間の短縮に貢献しています。

物流・倉庫(体積測定・パレタイジング)

物流業界では、荷物のサイズ計測や積み付け作業の自動化にToFカメラが威力を発揮しています。

例えば、コンベア上を流れる段ボール箱をToFカメラで上部から撮影することで、縦・横・高さの3Dデータを瞬時に取得し、体積を自動計算します。従来のメジャーを使った手作業では数秒〜十数秒かかっていた採寸作業が、ToFカメラ搭載の自動採寸器を用いれば0.5秒以下で完了し、コンベアを止めることなく計上処理が可能です。

また、サイズの異なる複数の箱をパレットに効率よく積み上げるロボット(パレタイジングロボット)の制御にも、空間認識用センサーとして活用されています。

参考:3Dビジョンによるロボットパレタイゼーションとデパレタイゼーション - Zivid

自動車(車内モニタリング・ADAS)

モビリティ分野でも、安全性向上のためにToFカメラの採用が拡大中です。車内に設置されたToFセンサーが、運転者の顔の向きや視線、まぶたの開閉状態を立体的にモニタリングし、居眠りや脇見運転を検知して警告を発するシステムが実用化されています。

また、助手席の乗員が大人か子供か、あるいはチャイルドシートが置かれているかを形状から判断し、エアバッグの展開力を自動で最適化するスマートな安全装備への応用も進んでいます。

車外においては、高度運転支援システム(ADAS)の近距離・中距離の障害物検知センサーとしての活用も研究されています。

まとめ | ToFカメラの特徴やメリットを理解して、自動化を推進しよう!


ToFカメラは、リアルタイム性、長距離測定、処理負荷の軽さといった数多くのメリットを持ち、製造業や物流、モビリティ分野における「自動化の要」として不可欠な技術となっています。導入コストや対象物の素材による制約といった考慮すべき点はありますが、適切な環境設定とシステム設計を行うことで、人間の目視を超えた高精度で疲労を知らない品質管理体制と、生産性の飛躍的な向上を実現できます。

TMCシステムでは、ToFカメラをはじめとする各種3Dビジョンセンサーを活用し、お客様の現場が抱える課題に合わせた最適なオートメーションシステムをご提案可能です。

「現在のラインにToFカメラが適しているかわからない」「ロボットピッキングを導入して省人化を図りたい」など、導入検討段階からのご相談も承っております。TMCシステムは、現場の現状分析から、センサーの選定、システム設計、導入後の運用サポートまで、専任のエンジニアが一貫して支援できる点が強みです。自動化による業務効率化とコスト削減をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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