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食品工場の品質検査とは?検査項目から種類、HACCPなどの認証制度まで解説

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私たちは日々、様々な食品を口にしています。これらの食品の安全と品質は、食品工場で行われる厳格な品質検査によって保たれています。食品の品質検査は、消費者の健康を守る上で不可欠であり、食品製造事業者の信頼性を確立する上で重要な役割を担っています。

本記事では、食品工場の品質検査の全体像を深く理解するため、必要な検査項目、国際的な認証制度、そして具体的な検査の種類について網羅的に解説します。食品工場における品質管理の現状を把握し、より効果的な検査体制の構築や自動化を検討する際の参考として、ぜひご活用ください。

食品の検査で必要な検査項目


食品の安全性を確保するためには、法令や業界基準に基づいた多岐にわたる検査項目を遵守する必要があります。これらの検査は、消費者の健康保護を目的としており、食品製造事業者の社会的責任を果たす上で不可欠です。検査項目は、国の定める規格基準や、特定の状況下で実施される「命令検査」など、その目的によって分類され、適切な実施が求められます。

命令検査

命令検査は、食品衛生法第26条第3項に基づき、厚生労働大臣が特定の食品や添加物について、輸入業者に対して検査を命じる制度です。

この制度は、過去の違反事例や国内外の情報を基に、当該食品が食品衛生法に違反する可能性が高いと判断された場合に適用されます。例えば、特定の国で製造された食品から基準値を超える残留農薬が検出された場合、以降の輸入時に同等の食品に対して命令検査が発動されることがあります。輸入業者は、命令を受けた場合、厚生労働大臣の登録を受けた検査機関で検査を行い、基準に適合していることが確認されるまで、その食品の販売や輸入を行うことはできません。

参考:輸入食品検査(命令検査) | 一般財団法人新日本検定協会

規格基準に則った検査

食品衛生法第13条第1項では、「特定(規格)の食品若しくは添加物等の成分、製造・保存の方法等について基準や規格を定めて、基準や規格に合わない食品や添加物等の製造、輸入、販売等を禁止」しています。これに基づき、食品には「成分規格」「製造基準」「保存基準」などが定められています。

例えば、乳製品には乳脂肪分や無脂乳固形分の割合、細菌数の上限などが成分規格として定められています。食品工場では、これらの規格基準を遵守しているかを確認するために、日常的に製品のサンプリングを行い、微生物検査や理化学検査(成分分析など)を実施します。この規格基準に則った検査は、食品の品質検査の根幹をなす要素です。

参考:e-Gov法令検索「食品衛生法」

食品工場における品質検査の重要性


食品工場における品質検査は、単なる法令遵守にとどまらず、消費者の「食の安全」を守るという絶対的な使命と、企業の信頼性維持に深く関わる重要なプロセスです。品質管理の不備が招く影響は甚大であり、消費者健康被害、ブランドイメージの失墜、売上の急激な低下、大規模なリコールといった事態を避けるために、厳格な品質検査が不可欠です。

消費者庁のリコール情報サイトでは、アレルゲン表示の欠落、異物の混入、賞味期限の誤記など、様々な理由で食品の自主回収が日々報告されています。消費者庁が公表した「食品等の表示に係る一斉取締りの指導件数等」によると、令和6年度は、夏季と年末の実施を通して、表示違反が確認された延べ施設数が計4,160件に及びます。この数値は、品質管理の徹底がいかに重要であるかを示しています。

一度食中毒や大規模なリコールが発生すれば、企業の信用は著しく低下し、回復には多大な時間と労力が必要となります。このような事態を未然に防ぎ、消費者に安心と安全を提供し続けることが、品質検査の最も重要な役割です。

参考:消費者庁「食品等の表示に係る一斉取締りの指導件数等」

食品の品質検査に関する認証や規格


食品の安全性を客観的に証明し、国際的な信頼を得るためには、公的な認証や規格の取得・運用が不可欠です。これらの認証・規格は、食品製造事業者にとって、取引先や消費者からの信頼獲得に加えて、グローバル市場での競争優位性を確立するための重要な要素となります。ここでは、食品工場に関連する代表的な3つの認証・規格について解説します。

HACCP(ハサップ)

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析重要管理点)は、食品の製造・加工工程において、食中毒などの健康被害を引き起こす可能性のある危害要因(生物的、化学的、物理的)を分析し、それらを管理するために特に重要な工程(重要管理点)を設定・監視・記録する衛生管理手法です。HACCPの最大の特徴は、従来の最終製品の抜き取り検査とは異なり、「工程の各段階で危害を予防・管理する」という予防的なアプローチを取る点にあります。

日本では、2020年6月から食品衛生法に基づき、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。農林水産省の「令和3年度食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査」によると、10月1日現在の食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況を「すべて又は一部の工場・工程(ライン)で導入している」と回答した事業所は61.9%で、前年度と比べ19.2ポイント増加しており、その重要性が広く認識されています。

参考:令和3年度食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査

ISO22000

ISO22000は、HACCPの原則を基盤とし、ISO9001(品質マネジメントシステム)の考え方を取り入れた、食品安全マネジメントシステム(FSMS)に関する国際規格です。

HACCPが製造工程における現場の衛生管理手法に焦点を当てているのに対し、ISO22000は、経営層のコミットメント、文書管理、トレーサビリティ、緊急事態への対応、内部監査、継続的改善など、組織全体のマネジメントシステムを要求する点で違いがあります。この規格は、食品の安全性を確保するための組織的な体制構築を網羅しており、食品のサプライチェーン全体(生産者から消費者に至るまで)での安全確保を目指しています。

参考:概要 | ISO 22000(食品安全) | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)

FSSC22000

FSSC22000(Food Safety System Certification 22000)は、ISO22000をさらに発展させ、より具体的な前提条件プログラム(PRPs:工場内の衛生環境や構造に関する要求事項)を詳細に規定した国際規格です。ISO22000に、食品製造業向けの技術仕様書(ISO/TS 22002-1など)とFSSC独自の追加要求事項を組み合わせて構成されています。

FSSC22000は、GFSI(世界食品安全イニシアチブ)によって承認された規格の一つであり、特に欧米の大手小売業者や食品メーカーとの取引において、取得が求められるケースが増加しています。ISO22000よりも具体的かつ厳格な要求事項を含むため、最高水準の食品安全体制を証明する規格として広く認知されています。

参考:概要 | FSSC 22000(食品安全) | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)

食品工場で徹底すべき3つの品質検査


食品工場における品質検査は、特定の段階のみで完結するものではありません。安全で高品質な製品を安定的に製造するためには、原材料の受け入れから製造工程、そして最終製品の出荷に至るまで、各段階で厳格なチェックを行う必要があります。ここでは、食品工場で徹底すべき3つの主要な検査タイミングについて解説します。

食品工場で徹底すべき品質検査1. 「受け入れ検査」

「受け入れ検査」は、食品製造プロセスにおける最初の、そして極めて重要な検査段階です。この検査では、納入された原材料や資材(包装材など)が、事前に定められた品質基準や仕様(規格書)を満たしているかを確認します。

具体的には、外観(色、形状、異物付着の有無)、温度(冷凍・冷蔵品の場合)、表示(品名、賞味期限、アレルゲンなど)の確認に加え、必要に応じてサンプルを採取し、微生物検査や理化学検査を実施します。この段階で規格外の原材料や異物混入を見逃すと、その後の製造工程全体に悪影響を及ぼし、最終製品の品質不適合や大規模なリコールの原因となる可能性があるため、厳重なチェックが求められます。

食品工場で徹底すべき品質検査2. 「製造工程の検査」

「製造工程の検査(工程検査)」は、原材料が製品へと加工されるプロセスの中で行われる検査です。HACCPにおける「重要管理点(CCP)」のモニタリングもこの工程検査に含まれます。

例えば、加熱工程における中心温度と時間の確認、冷却工程における品温の確認、金属探知機やX線検査機による異物混入のチェック、調合工程における配合比率の確認など、各工程の特性に応じた検査が実施されます。この工程検査の目的は、製品が正しく製造されているかをリアルタイムで監視し、異常が発生した場合には即座にラインを停止させ、原因を究明・排除することです。これにより、不良品の製造(仕掛品のロス)を最小限に抑え、品質を維持することが可能となります。

食品工場で徹底すべき品質検査3. 「完成品・製品の検査」

「完成品・製品の検査(最終検査)」は、製造工程をすべて終え、包装・梱包された最終製品に対して行われる最後の品質チェックです。この検査では、製品が定められた規格基準(成分、味、香り、外観など)をすべて満たしているかを確認します。また、表示(賞味期限、アレルゲン、栄養成分など)の正確性、包装の不備(シール不良、印字ミスなど)、重量が規格内であるかなども厳しくチェックされます。

この最終検査をクリアした製品のみが「出荷可」と判断され、消費者のもとへと届けられます。万が一、ここで不適合品が見つかった場合は、原因を徹底的に調査し、同じロットの製品の出荷を停止するなど、市場への流出を水際で食い止める最後の砦としての役割を担います。

食品工場における代表的な検査


食品工場の品質検査室では、日々、様々な科学的分析が行われ、多岐にわたる項目がチェックされています。これらの検査は、目に見えない微生物汚染から微量なアレルギー物質、さらには法律で定められた栄養成分まで、消費者の安全を確保するために不可欠です。ここでは、食品工場で一般的に実施されている代表的な検査の種類について解説します。

異物検査

食品への異物混入は、消費者の健康被害に直結するだけでなく、企業の信頼を著しく損なう重大な問題です。これを防ぐため、製造ライン上や最終製品に対して厳格な異物検査が実施されます。

代表的な方法としては、金属片を検出する「金属探知機」や、金属以外の硬質な異物(ガラス、プラスチック、石、骨など)を検出できる「X線異物検出機」が広く用いられています。近年では、AIを搭載し、より微細な異物や、従来は検出が困難であった異物(例:毛髪)の検出精度を高めたシステムも導入され始めています。

食品アレルギー物質検査

食品表示法に基づき、特定の原材料(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生など特定原材料7品目)を含む食品には、アレルギー表示が義務付けられています。

品質検査では、製造ラインの洗浄が不十分なことによるコンタミネーション(意図しない混入)がないか、また、表示が正しく行われているかを確認するため、専用の検査キット(ELISA法など)を用いたアレルギー物質の含有検査が行われます。アレルギー表示の誤りは、消費者の生命に関わる重大な問題に発展する可能性があるため、厳重な管理が求められます。

食品微生物検査

食中毒の原因となる細菌(サルモネラ、O-157など)や、食品の腐敗を引き起こす微生物を検出するための検査です。具体的には、食品中の「一般生菌数」(食品の汚染度合いを示す指標)や、「大腸菌群」(衛生的な取り扱いの指標)、そして食中毒の原因となる「病原性微生物」の有無を調べます。

厚生労働省の「食中毒統計資料」によると、令和4年(2022年)の食中毒発生件数は962件、患者数は6,856人に上ります。こうした食中毒を未然に防ぐため、微生物検査は食品衛生管理の基本として極めて重要です。

参考:厚生労働省「令和4年(2022年)食中毒発生状況」

食品理化学検査

食品理化学検査は、食品の成分や物理的・化学的性質を分析する検査の総称です。例えば、食品添加物(保存料、着色料、甘味料など)が使用基準を遵守しているかの分析、農産物の「残留農薬」が基準値以下であるかの検査、食品の鮮度や保存性に関わる「水分活性」や「pH(水素イオン濃度)」の測定などが含まれます。これらの検査は、食品の品質を一定に保つとともに、法律で定められた基準を遵守していることを確認するために不可欠です。

栄養成分分析


健康増進法の施行に伴い、容器包装に入れられた一般用加工食品には、「栄養成分表示」(エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量))が義務化されています。品質検査では、製品のレシピ(配合)通りに製造されているか、また、表示されている栄養成分値と実際の製品の成分値が一致しているかを確認するために、定期的に栄養成分の分析が行われます。これは、消費者が正確な情報に基づいて食品を選べるようにするために重要な検査です。

食品中の寄生虫検査

近年、特に注目されているのが寄生虫検査です。特に、サバ、アジ、イワシなどの魚介類に寄生する「アニサキス」による食中毒は、前述の厚生労働省の統計でも、令和4年(2022年)に566件と、食中毒の原因物質として最も多く報告されています。

これを受け、水産加工工場などでは、目視検査の強化はもちろん、アニサキスを殺滅するための冷凍処理(-20℃で24時間以上)が適切に行われているかの管理、あるいはブラックライト(紫外線)照射による検査などが取り入れられています。

参考:厚生労働省「令和4年(2022年)食中毒発生状況」

まとめ:安全な食品を提供するためには厳格な品質検査が必須!自動化の相談はTMCシステムへ!


本記事では、食品工場の品質検査について、その重要性から検査項目、認証制度、そして具体的な検査の種類まで幅広く解説しました。

食品の安全性を確保するためには、原材料の受け入れから製造工程、最終製品の出荷に至るまで、HACCPやISOなどの規格に基づいた厳格な品質検査体制を構築・運用することが不可欠です。異物混入、微生物汚染、アレルギー物質の管理など、多岐にわたる検査を日々、正確かつ継続的に実施することは、食品製造事業者の最も重要な責務です。

しかし、人手不足の深刻化や、検査員のスキルによるバラつき、ヒューマンエラーのリスクといった課題は、食品工場における品質管理の大きな負担となっています。

TMCシステムでは、これらの食品工場の品質管理における課題を解決するため、AIや画像処理技術を活用した検査の自動化ソリューションを提供しています。目視検査の自動化による異物検出精度の向上や、検査データの自動記録によるトレーサビリティの強化など、お客様の現場に合わせた最適なシステムを提案します。

厳格な品質検査体制の構築と、その運用の効率化・自動化に関心をお持ちの担当者様は、ぜひTMCシステムまでお気軽にご相談ください。

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