物流効率化の要!パレタイジングシステムの基礎知識と導入事例を紹介

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物流効率化の要!パレタイジングシステムの基礎知識と導入事例を紹介

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物流コストの上昇と人手不足が深刻化する中、製造業では「いかに効率的に製品を出荷するか」が競争力を左右する重要な課題となっています。特に、製品をパレットに積み上げる作業(パレタイジング)は、従来多くの人手と時間を要する工程でした。しかし、自動化技術の進歩により、この課題を解決する「パレタイジングシステム」が注目を集めています。

本記事では、物流担当者や生産技術部門の方々に向けて、パレタイジングシステムの基礎知識から実際の導入事例まで、実践的な情報をお届けします。

 

パレタイジングとは?物流における重要な役割

パレタイジングとは、製品や荷物をパレット(荷物を載せるための台)上に効率的かつ安全に配置する作業のことです。単純に製品を載せるだけでなく、輸送時の安定性、荷崩れ防止、積載効率の最大化など、多くの要素を考慮した専門的な技術が求められます。

デパレタイジングとの違いと相互関係

別記事「デパレタイジングシステムの基礎知識」でもご紹介していますが、デパレタイジング(パレットから荷物を取り下ろす作業)とパレタイジングは、物流における「入口」と「出口」の関係にあります。

  • デパレタイジング:受け入れた荷物をパレットから取り下ろし、生産工程に投入
  • パレタイジング:完成品をパレット上に積み上げ、出荷準備を行う

両方のシステムを導入することで、製造現場の物流全体を自動化し、一貫した効率化を実現できます。

パレタイジングシステム導入の3つのメリット

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パレタイジングシステムの導入には、さまざまなメリットが期待できます。この章では、代表的なメリットを3つ紹介します。

1. 人件費削減と人手不足対応
2. 処理能力の向上
3. 品質の安定化

3つのメリットについて、順番に見ていきましょう。

1. 人件費削減と人手不足対応

従来4〜6名で行っていた重労働作業を1〜2名の監視オペレーターで実施可能になり、深刻化する労働力不足の根本的解決策となります。特に若年労働者の確保が困難な現在、経験やスキルに依存しない安定した作業体制を構築できるため、人材採用コストの削減効果も期待できます。

2. 処理能力の向上

人手作業と比較して3倍以上の処理速度向上を実現します。というのも、人手作業のような疲労による作業効率低下が無いためです。連続稼働により一定の処理速度を維持できるので、生産計画の精度向上と納期短縮を実現します。繁忙期の残業時間削減や、需要変動への柔軟な対応も可能になります。

3. 品質の安定化

人的要因による積み方のばらつきを完全に解消し、最適な重量配分と積み付けパターンを常に実現します。荷崩れ率を大幅に改善できるので、商品破損による損失を年間数百万円規模で削減できるのです。また、パレット積み付けの標準化により、トラック積載効率も向上し、輸送コストの削減効果も期待できます。

パレタイジングシステムの種類と特徴

パレタイジングシステムは、現場の制約や目的に応じて最適なタイプを選択することが重要です。以下では、主要な制約・目的別に適したシステムをご紹介します。

1.ガントリー/直交型(限られたスペースで設置する場合おすすめ)

特徴: 精度の高いXYZ軸の直線的動作で省スペースが特徴。支柱が4本ある門型構造のガントリー型と、支柱が少なく自由度の高いレイアウトが可能な直交型があります。どちらもシンプルな構造により状況に応じた設計変更がしやすく、比較的低コストで導入できるのがポイントです。可動範囲が直線に限られるものの、ユニットの組み合わせの自由度が高く、複雑な動作はできませんが直線動作による高精度な作業を得意としています。

主な用途

  • 段ボール箱の積み上げ
  • 袋物製品(米、肥料など)
  • 缶・瓶製品
  • 比較的軽量な製品(10-50kg程度)

メリット

  • 省スペース設置が可能
  • 比較的低コストで導入可能
  • 作業員の安全性を確保しやすい
  • フリーレイアウトで既存設備に追加しやすい


2.多関節ロボット型(手作業を自動化したい場合におすすめ)

特徴: 人間の腕のように曲線的な動作でプログラミングにより繊細な動きにも対応。レイアウトの自由度は高めですが、旋回動作により可動域が広いので、設置場所の安全面やスペースに配慮が必要です。
直交型・ガントリー型が直線のみの単純作業を得意としているのに対し、多関節ロボットは人間の腕に近い繊細な動きが特徴です。モーター駆動が主流になってモーターの電子制御が可能になったことで、より繊細な動きができるように。また、画像センサーや力覚センサーなどのセンサー性能の向上により、人力に頼るしかなかった作業の自動化にも貢献しています。

主な用途

  • 多品種・多サイズの段ボール箱
  • 不定形製品
  • 重量物(100-700kg対応機種あり)
  • 複雑なパレットパターンが必要な製品


メリット

  • 人間に近い柔軟な動作が可能
  • 多品種対応に優れている
  • 複雑なパレットパターンに対応
  • プログラミングによる動作調整が容易


3.機械装置型(大容量・継続的な出荷がある場合におすすめ)

特徴: 重い袋類の運搬や積み付けのために古くから開発された機械で、コンベアなどが一体化したタイプ。設置方向などがある程度限られるため、広めのスペース確保と大掛かりな設備導入が必要です。

主な用途

  • 重量物(袋類、ペール缶、ドラム缶など)
  • 大量生産ライン(毎時3000-5000個対応)
  • 単一製品の高速処理
  • 24時間連続稼働が必要な現場


メリット

  • 極めて高い処理能力
  • 重量物対応(1,000kg以上も可能)
  • 24時間連続運転に適している
  • 安定した高速動作


パレタイジングシステムは現場の制約や目的に応じて最適なタイプを選択することが重要です。複雑な軌道や柔軟な動作が求められる場合は、人に近い動きのできる多関節ロボットが適しています。一方で、シンプルで確実な動作を求める場合は、直交型やガントリー型が適しているでしょう。
システムタイプが決定したら、生産量に120〜130%の余裕を持った処理能力、製品の寸法・重量・形状に応じた専用エンドエフェクターの設計、設置面積・天井高・床耐荷重などの環境条件、そして3〜5年での投資回収を目指した費用対効果の4つの観点から総合的に評価することで、パレタイジング作業の効率化と生産性向上を実現できます。

物流現場で実証!パレタイジングシステム活用事例

【事例1】食品製造業:レトルト食品のパレタイジング自動化

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企業概要と導入背景

従業員45人の食品メーカーで、レトルト食品やパック詰め食品をOEM(相手先ブランドによる生産)供給を手がけています。顧客からの引き合いが増え、封入・梱包・仕分け工程で作業員の負担が重くなってきたことから、最終工程のパレット積みで多関節ロボットを導入しました。

導入前の課題

  • 封入・梱包・仕分け工程での作業員負担の増大
  • 最終工程のパレット積み作業における人手不足
  • 顧客ごとに異なる段ボールの形状や積み方への対応
  • 女性スタッフへの重労働負荷



導入したシステム

システム構成

  • 多関節ロボット
  • 様々な条件に柔軟対応できる専用ハンド
  • 省スペース型回転型パレットチェンジャー
  • 顧客別パターン対応システム


技術的特徴
: 段ボールの形状や積み方、パレットは顧客ごとに異なるため、様々な条件に柔軟に対応できるハンドを開発。また、保管スペースを確保するために、省スペース型回転型パレットチェンジャーも新たに開発しました。

導入成果
定量的効果

  • 積み付け作業を担当していた女性スタッフ2人は検査・計量の工程に移り、生産性が25%向上
  • 年間の効果として、利益が480万円(2人分の人件費に相当)増加
  • 投資回収にかかる期間は5.2年を見込む


運用面での効果
: 重労働からの解放により、作業員をより付加価値の高い検査・計量工程に配置転換することが可能となり、全体的な生産性向上を実現しました。

参考:経済産業省 日本ロボット工業会「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018」

【事例2】食品製造業:多種多様製品のパレタイジング完全自動化

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企業概要と課題

自社ブランド製品のほかにPB食品も製造・販売している食品メーカーで、顧客ニーズの多様化に伴い、製品アイテム数や生産量が増加。また、人手不足により工場スタッフも集まりにくくなっていることから、多関節ロボットを導入しました。

導入前の課題

  • 製品アイテム数・生産量の増加への対応
  • 人手不足による工場スタッフの確保困難
  • 重量検査、製品認識、パレタイジング設備の大規模ライン設置スペース不足
  • 多種多様な製品への対応


導入したシステム

システム構成

  • 多関節ロボット(統合型)
  • フレキシブルハンド
  • ロードセルによる重量検査機能
  • カメラによる製品識別機能
  • 一体型パレタイジングシステム

技術的特徴: 自動化のためには重量検査装置、製品認識設備、パレタイジング設備を組み合わせた大規模なラインが必要でしたが、設置スペースが足りず困難な状況でした。そこで必要な工程全てをロボットに組み込みました。

導入効果
定量的成果

  • 導入前後で生産量は変わりませんが、パレタイジングに要していた人数1人が0.2人に減り、労働生産性は5倍に
  • 年間のコスト低減効果は350万円で、これは1人分の人件費350万円(賞与含む)に相当
  • 投資回収年は6.1年を見込む


技術的優位性: このロボットは、フレキシブルハンドで多種多様な製品が扱えるだけでなく、カメラで製品識別も可能で、パレタイジングの専属スタッフが不要になりました。
運用面での効果: 重量検査から製品認識、パレタイジングまでを一つのロボットシステムで統合することで、設置スペースの問題を解決しながら完全自動化を実現。多品種対応により製品切り替えも柔軟に行えるようになりました。

参考:経済産業省 日本ロボット工業会「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018」

パレタイジングシステムに関するご相談は、TMCシステムへ

製造現場の物流効率化で次のようなお困りではありませんか?

  • パレタイジング作業の自動化を検討したい
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  • 重量物取扱による労働安全性を向上させたい
  • 24時間稼働による生産性向上を実現したい
  • 投資対効果を明確にした設備導入を相談したい


当社では、お客さまの製品特性・生産規模・作業環境に合わせた最適なパレタイジングシステムをご提案いたします。現状分析から要件定義、システム選定、導入後のサポートまで、ワンストップでお手伝いさせていただきます。中小企業でも実現可能な段階的導入についても、まずはお気軽にご相談ください。

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