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外観検査装置の導入ガイド:種類・特徴から選定のポイントまで完全解説

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製造現場における品質管理の自動化ニーズが高まる中、外観検査装置の導入を検討する企業が増えています。しかし、「どのタイプの装置が自社に適しているのか」「導入コストに見合う効果が得られるのか」など、多くの疑問を抱える方も少なくありません。本記事では、外観検査装置の基礎知識から選定のポイントまで、実例を交えながら詳しく解説していきます。

 

外観検査装置とは

外観検査装置の基本構造と役割

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外観検査装置は、製品の外観品質を自動的にチェックするための専用機器です。基本的な構造として、製品を固定し検査位置まで運ぶための搬送システム、製品を撮影するための産業用カメラ、製品を適切に照らす照明装置、そして画像を処理して良品・不良品を判定するコンピュータシステムで構成されています。 製品の形状や材質、検査項目に応じて、これらの要素を最適に組み合わせることで、キズや汚れ、寸法誤差などを高精度に検出することができます。たとえば、スマートフォンの筐体検査では、微細なキズや色むらを検出するために、特殊な照明とマクロレンズを組み合わせた光学系が採用されています。

※画像検査の基本的な仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

メリット:

  • 検査基準の均一化:人による検査のばらつきを解消
  • 生産性の向上:高速かつ連続的な検査が可能
  • データの蓄積・活用:検査結果を記録し、工程改善に活用可能

デメリット:

  • 初期投資の負担:装置の規模や機能に応じて数百万円から数千万円規模の投資が必要
  • 設定・調整の手間:製品切り替え時の条件設定に時間が必要
  • 想定外の不良への対応:事前に登録していない不良パターンの検出が困難

 

 

外観検査装置の種類と特徴

卓上型検査装置

小規模生産や研究開発用途に適した、比較的コンパクトな装置です。作業者が手動で製品をセットし、ボタン操作で検査を実行します。電子部品メーカーの試作品検査や、医療機器の抜き取り検査などで活用されています。
導入コストは数百万円程度からで、設置スペースも最小限で済むため、初めて外観検査装置を導入する企業にもおすすめです。ある電子部品メーカーでは、従来2名で行っていた目視検査を1名での作業に効率化できたという事例があります。

半自動外観検査装置

作業者による製品の投入は必要ですが、検査工程自体は自動化された装置です。1時間あたり数百個レベルの中規模生産ラインに適しています。自動車部品や精密機器の検査によく使用されており、複数の検査項目を1台でこなせる万能型の装置も多くあります。
価格帯は1,000万円前後が一般的で、専用の作業台や搬送機構が付属します。ある自動車部品メーカーでは、この装置の導入により検査工程の人員を3名から1名に削減しながら、検査精度を20%向上させることに成功しています。

自動検査装置

製品の投入から検査、仕分けまでを全て自動で行う装置です。1時間あたり数千個レベルの大規模生産ラインで活用されています。作業者は装置の監視と定期的なメンテナンスが主な役割となり、人件費の大幅な削減が可能です。
特に電子部品や食品業界での導入が進んでおり、24時間連続運転にも対応しています。導入コストは3,000万円以上と高額になりますが、生産量が多い場合は早期の投資回収が見込めます。ある食品メーカーでは、パッケージの印字検査と異物検査を同時に行う自動検査装置を導入し、年間の品質クレームを90%削減できた事例があります。

インライン全自動検査装置

生産ラインに直接組み込まれ、製造工程の一部として機能する装置です。製品の搬送には既存のラインを利用するため、専用の搬送機構が不要です。また、製造装置とデータを連携することで、不良品の発生原因をリアルタイムで特定することも可能です。
導入コストは5,000万円以上と最も高額ですが、大量生産ラインでは必須の装置となっています。ある半導体メーカーでは、この装置を用いて製造直後の部品を100%検査することで、出荷後の不良品発生率を0.1%未満に抑えることに成功しています。

外観検査装置選定のポイント

生産規模に応じた装置選び

外観検査装置の選定では、生産量と検査速度が適合しているかが最も重要です。以下を目安に検討してください:

  • 少量生産(1時間あたり数十個):卓上型検査装置 投資額:数百万円程度、省スペース設計
  • 中量生産(1時間あたり数百個):半自動外観検査装置 投資額:1,000万円前後、専用作業スペースが必要
  • 大量生産(1時間あたり数千個以上):自動検査装置またはインライン全自動検査装置 投資額:3,000万円以上、大規模な設置スペースが必要

ただし、将来の生産量増加も考慮に入れた選定が重要です。現在の生産量だけを基準に選定し、数年後の増産に対応できずに装置の買い替えを余儀なくされるケースも少なくありません。

検査対象物の特性考慮

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製品の材質や形状によって、必要な検査機能や光学系は大きく異なります。例えば、金属製品の検査では表面の反射を抑制する特殊な照明技術が必要不可欠です。拡散照明やドーム照明を使用してムラのない照明条件を実現し、微細なキズやヘアライン、打痕などを確実に検出するための高分解能カメラの採用が求められます。また、検査対象が高温の場合は、装置の耐熱設計や冷却機構の検討も必要になります。 透明部品の検査では、バックライト照明による透過検査が基本となります。気泡、異物、クラックなどの欠陥を検出するだけでなく、偏光フィルターを使用した応力検査も可能です。表面と裏面の同時検査が必要な場合は、複数のカメラを適切に配置する必要があります。
樹脂成形品の場合、光沢面と艶消し面が混在することが多いため、複数の照明条件を使い分ける必要があります。色むらや成形不良の検出にはカラーカメラが必須で、そり・変形の検査には3D測定機能の搭載を検討する必要があります。また、静電気対策が必要になるケースも多く見られます。 小型精密部品の検査では、マクロレンズや顕微鏡光学系の採用が必要不可欠です。微細な寸法測定のための高精度なステージ機構や、振動対策のための除振装置の設置、さらには清浄度を保つためのエアカーテンやクリーンブースの検討も重要になります。

コスト評価の詳細

外観検査装置の導入時に考慮すべき主なコスト項目:

  • 初期導入コスト
     o 装置本体価格:数百万円〜数千万円
     o 付帯設備費用:空調設備、防振装置など
     o 設置工事費:搬入、設置、調整、配線工事など
  • ランニングコスト
     o 電気代・消耗品費:照明装置の交換など
     o 定期メンテナンス費用:装置価格の5〜10%程度(年間)

投資回収の試算例として、2,000万円の自動検査装置を導入した場合、年間600万円のコスト削減効果が見込めます。
例)
①現在のコスト 1,100万円/年
(検査員人件費[2名で1,000万円]+不用品流出による損失[100万円])
②導入後のランニングコスト 500万円/年
(装置の減価償却[400万円]+ランニングコスト[100万円])
③コスト削減効果 = ① ー ② = 600万円/年

外観検査装置に関するご相談は、TMCシステムへ

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TMCシステムでは、お客様の製品特性や品質管理要件に合わせた最適な外観検査装置をご提案いたします。検査装置の選定から導入後のサポートまで、ワンストップでお手伝いさせていただきます。まずはお気軽にご相談ください。

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