製造業における不良率とPPMとは?基礎から計算方法、実践的アプローチまでわかりやすく解説!

不良率とPPMの基本:概念と計算方法
製造業の品質管理において、不良率とPPM(Parts Per Million)は製品品質を数値化し、改善活動の効果を測定するための重要な指標です。これらの指標を正確に理解することで、現状把握から効果的な改善策の立案まで、品質管理のあらゆる段階で活用できます。
不良率の基本と計算方法
不良率は生産した製品のうち不良品が占める割合を示す最も基本的な品質指標です。一般的に百分率(%)で表され、次の式で計算します。不良率は、次の計算式で計算できます。
不良率(%)= 不良品数 ÷ 生産総数 × 100
例えば、1日に5,000個の部品を生産し、そのうち75個が不良品だった場合:
不良率:75 ÷ 5,000 × 100 = 1.5%
不良率と密接に関連する指標として「歩留まり」があります。歩留まりは良品率とも呼ばれ、全体に対する良品の割合を示す指標です。歩留まりは次の計算式で計算できます。
歩留まり(%)= 良品数 ÷ 生産総数 × 100 = 100 - 不良率
上記の例では、歩留まりは98.5%(100% - 1.5%)となります。歩留まりは生産効率や原価に直結するため、特に半導体や精密機器の製造では重要な管理指標です。
工程別不良率の重要性
製造現場では、工程ごとの不良率を把握することも重要です。工程不良率は、次の計算式で算出できます。
工程不良率(%)= その工程での不良品数 ÷ その工程での処理数 × 100
多段階の製造工程を持つ生産ラインでは、各工程の不良率を把握することで、品質改善の優先順位付けが容易になります。例えば、5,000個の電子部品製造において、プレス工程で45個、めっき工程で30個の不良が発生した場合:
- プレス工程の不良率:0.9%(45÷5,000×100)
- めっき工程の不良率:0.6%(30÷(5,000-45)×100)
優先順位を決定する際は、複数の要素を総合的に判断する必要があります。影響の大きさの観点では、プレス工程の不良45個は絶対数が多く、後工程のめっき処理でも無駄な資源消費が発生するため全体への影響が大きくなります。
また工程の位置として、プレス工程は前工程にあるため、ここでの改善は後続工程全体の効率向上につながります。さらに改善投資対効果や技術的実現可能性も考慮し、コストと効果のバランス、実行の難易度を検討する必要があります。このような多面的な分析により、単純な不良率の大小だけでなく、総合的な改善効果を考慮した優先順位付けが可能になります。
PPMの重要性と計算方法
PPM(Parts Per Million)は、百万個あたりの不良品数を表す指標です。高品質が求められる現代の製造業では、不良率よりもPPMが使用される機会が増えています。PPMの計算式は次のとおりです。
PPM = 不良品数 ÷ 生産総数 × 1,000,000
例えば、不良率1.5%の場合のPPM値は次のように計算します:
0.015 × 1,000,000 = 15,000 PPM
つまり、百万個あたり15,000個の不良品が発生していることを意味します。
PPMを使用する3つの理由
品質管理の指標としてPPMを使用する理由は、大きく次の3つです。
- 理由1. 高精度な品質管理が必要な現代の製造業では、不良率が非常に低い(例:0.01%以下)ケースが多く、パーセンテージでは数値が小さすぎて比較や管理がしにくい
- 理由2. 国際的な品質基準や取引先要求がPPM単位で設定されているケースが増えている
- 理由3. シックスシグマなどの品質管理手法がPPMを基準に品質レベルを定義している
特に自動車部品や電子部品など、高い信頼性が求められる業界では、「シングルPPM(一桁PPM、つまり10PPM未満)」が目標として設定されることも珍しくありません。
不良率・PPM計算での注意点と対策
品質指標の計算は基本的には単純ですが、実務では様々な要因によって誤った計算や解釈が生じることがあります。
1. 母数(分母)の定義を明確にする
不良率やPPMを計算する際、生産総数(分母)の定義が曖昧だと正確な数値が得られません。例えば、再加工品を含めるか除外するか、検査サンプル数を母数とするか全数を母数とするかによって結果が大きく変わります。
対策:品質指標の計算方法を社内で標準化し、マニュアル化することが重要です。また、報告書には必ず計算の定義を明記しましょう。
2. 適切なサンプル数を確保する
特に低い不良率を測定する場合、サンプル数が少ないと統計的な信頼性が低下します。100個のサンプルで0個の不良を検出した場合、不良率は0%と計算されますが、これは真の不良率が0%であることを保証するものではありません。
対策:信頼できる品質指標を得るためには、適切なサンプルサイズを確保することが重要です。低い不良率を検出するための目安として、次の簡易式が実務でよく使われています。
必要サンプルサイズ ≒ 3 ÷ 予想される不良率
この簡易式は統計的な考え方に基づいており、例えば0.1%の不良率を検出するためには、少なくとも3,000個のサンプルが必要という目安になります。この式は実務での簡易的な判断基準として有用です。
3. 時間軸で品質指標を管理する
品質指標は時間とともに変動するものです。単発的な測定結果のみで判断すると、一時的な異常値に惑わされる可能性があります。
対策:不良率やPPMの推移を時系列で管理し、トレンドを把握することが重要です。管理図などの統計的手法を用いて、通常の変動範囲と異常値を区別できるようにしましょう。
不良率低減のための実践的アプローチ
不良発生の要因と根本原因分析
製造現場の不良は大きく4つの要因に分類できます:
製造現場で発生する不良の背景には、必ず明確な要因が存在します。多くの企業が見落としがちなのは、これらの要因が複雑に絡み合っている点です。人的要因では、単なるスキル不足だけでなく、作業者のモチベーションや疲労度も大きく影響します。設備・機械要因においては、目に見える故障だけでなく、微細な調整のずれや予兆段階での異常も重要な警告サインとなります。
これらの要因を表面的に捉えるのではなく、「なぜなぜ分析」や「特性要因図」を活用して根本原因まで掘り下げることで、真の解決策が見えてきます。対症療法的な応急処置では、同じ問題が必ず再発するからです。
組織全体で取り組む品質改善の仕組みづくり
不良率低減を持続的な活動とするには、組織的な取り組みが不可欠です。効果的なアプローチとしては以下が考えられます。
- ISO9001などを基盤とした品質マネジメントシステムの構築
- QCサークルなどの小集団活動の活性化
- IoTを活用した品質データのリアルタイム見える化
- サプライヤーと連携した品質向上活動
不良率低減の取り組みは、単なる品質コスト削減にとどまらず、顧客満足度向上や企業ブランド価値の向上にもつながります。製造業の競争力強化のための重要な経営戦略として位置づけ、継続的に推進することが重要です。
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